聖なる夜を灯す陽

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「遥人さんは…大嘘つきです」 …早くに教えてくれていたならば、何かが変わっていたんじゃないか。 そう思うと、やはり責めずにはいられなかった。 「だから今日はこうしてお詫びに来てんじゃん。イブに男一人で飯食いに来るなんて、なかなか誠意こもってると思わない?」 「思いませんよ」 「それは残念」 睨む私を気に留める様子もなく、取り出した煙草を口角の上がった唇で挟んだ彼。 言葉と表情がこれほどまでに一致しないのも、道化師ゆえにと解釈すれば心も和らぐ。 「帰り、新聞屋前の電柱とか見てみて」 で、でんちゅう…? いきなりで、耳慣れない単語に、思わず眉を詰めてしまう。 予想通りの反応が面白いのか、頬杖をついたまま、切れ長の目は三日月型に細まる。 「クリスマスプレゼント置いてきたの、優しいでしょ?」 「は…?」 「さて、そろそろ行こうかな」 「えっ…、あ」 立ち上がり、奥のレジ台に向かった背中を引き止めようとしたけれど。 時計を見ると私も休憩が終わろうとしていることを告げていた。
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