僕の名前は遠藤です。

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今この瞬間、緒沢さん鑑賞に勤しんでいた崇拝者全員が心の中で舌打ちをかましただろう。 もはや蹴り飛ばしているかもしれない。 「ありがと」 「…うん」 「今日も迎えに行くな」 「今日はいいよっ!昨日風邪っぽいって」 「いーや。会いたいの」 しかし当の本人は、気付く素振りもなく毎朝の恒例行事だと言わんばかりに遠く離れた5組からやって来ては。 ほんのり紅潮した柔らかそうな頬をぷにっとつねる、といったような茶番劇をひけらかす。 …しかしこれがまた絵になるから、胃もキリキリと蠢きだすというもの。 俺たちが緒沢さんを拝みたて、可愛い子に現を抜かすと同じように、一年の時から女子達にもまた騒ぎ立てる相手が何人もいるわけで。 その中でも常に筆頭にあげられ、進級と同時に緒沢さんと付き合いだしたのが、この古賀 奏人。 こいつとは一年の時から、亮介たちと毎日登下校を一緒にするほどの仲だったりする。 今でも登校を共にする奏人の第一印象は、誰からも好かれそう、だった。 実際も明るく、ノリも良く、誰に対しても分け隔てなく接する典型的な愛され男。 その上、頭も良く、スポーツも出来るのだからモテない方が可笑しかった。
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