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それに加えて良いところの坊ちゃんなのだから、女子達が目の色を変えないはずもなく、
俺は常に彼の好きな人の聞き出し役を頼まれていた。
しかし、ヤツは決まって。
『今はいっぱいいっぱいだから、恋愛はまだいいよ』
と、はっきり言っていたのに。
…あれは、幻だったのだろうか。
「しず、俺に会うの嫌?」
「ちがっ、そんな事ないよっ!本当にそんな事ないっ」
「んじゃ、迎えにいくな?」
「………」
こくりと慎みやかに頷いた彼女を、溢れんばかりの笑顔で見つめている。
あれほど女に興味がないと思わせてならなかった男が、今では公然と恥じらいもなく好き好きオーラを振りまく馬鹿になっていることなんて、誰が想像できたことか。
ましてやその相手が緒沢さんなのだから、正直、今でも信じられなかったりする。
共通点もなければ、話しているところも見たことがない。
俺にとってこの二人は、顔見知りのただの同級生だとばかりに思っていたのだ。
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