僕の名前は遠藤です。

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事実、奏人は夏休み明け、何の前触れもなく緒沢さんではない伊藤さんと付き合いだした。 中学時代からの知り合いで家が近所らしく、可愛いと男子から評判の子だった。 強気な性格が苦手な俺からすれば、あまり良さは解らなかったが、それでも普通に祝福した。 緒沢さんはというと亮介から彼氏がいると聞かされ、文化祭で実際にかなり男前な社会人と一緒にいた。 文化祭の準備期間最終日に奏人が緒沢さんの作業を手伝っていたみたいだが、それも亮介と職員室に行っていた俺は目の当たりにしていない。 ましてや野郎共との語らいの時には必ず出てくる彼女の話題に対しても。 『本当に綺麗だよなぁ』 『あー、うん』 と、あまり気乗りしない様子だった。 俺の中でダントツ学年トップの彼女を評価しない理由がどこにあるのか。 変な闘争心が渦巻き始め、挑戦状を突きつけられた気分で。 『緒沢さん、綺麗じゃない?』 『……そう、…だな』 相変わらず、歯切れの悪い返事をよこしてくれたくせに。 それは単なるカムフラージュに過ぎないと知ったのは、文化祭明けの体育館で行われた体育の授業だった。
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