恋の花火は終わらない

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 蝉が大合唱を続ける、8月半ば。 「…………」  私は自宅アパートにあるクローゼットを開いて唸り声をあげていた。  エアコンが効いてるおかげで室内自体は快適ではある。  が、今立っている場所はそれの冷風が直撃する。  かれこれ10分以上その場から動いていないので丸出しの腕はもう鳥肌状態。  さっさと離れればいいのに動かない、その訳は。 「どうしよう……」  私の目線の先にあるのは、クローゼットの中心にかけてある真新しい浴衣。  紺地にピンクの小花柄で、帯もピンクという大人っぽくも可愛らしい代物だ。
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