貴族学校の試験

2/18
778人が本棚に入れています
本棚に追加
/1192ページ
今日は貴族学校で試験を受ける日だ。 本来、貴族学校に入学する事は貴族の子弟にとって義務なので試験など必要無い。 じゃあ、なぜ受けるのかと言えば、俺がカガリス学園都市に明日、出発するからだ。 そして往復の予定を考えると帰って来る前に貴族学校が始まってしまうからだった。 試験の結果次第で道中での宿題の有る無しが決まるから俺の意気込みはMAX以上だった。 だって、それで大好きな彼女とイチャイチャ出来る時間が削れるか否かが決まるんだよ。 馬車から見える学校を睨み、俺が握り拳を作って構えていると、 「セルナ、意気込み過ぎ意気込み過ぎ。 私が昨日指導したんだから今のセルナなら楽勝だよ。 ほら力を抜いて深呼吸しようね。」 と一緒に保護者代わりに付いて来たハルバ兄に頭を撫でられつつ言われた。 本当ならライード父かローシア母が一緒に来てくれる所だけど、ライード父は現在グロール市で執政官をしているし、ローシア母は貴族復帰した為に不在のライード父の代わりに御茶会等の社交界の付き合いに奮闘していて忙しかった。 特にローシア母は貴族に復帰しても、没落中に始めた料理教室だけは存続するつもりなので、その時間を削らない様に、そうじゃない時間は社交界の方に費やしているのだ。 それでハルバ兄が俺に付き添う事になった。 ただ俺の場合は意気込みだけじゃなかった。 〈大丈夫よ、セルナ様。 私が付いているから怖くない怖くない。 …ゴメンね。 私と父がユーラビア時代にマイルード家を没落させたから…。〉 と右上腕に張り付いているラビナから俺は盛んに励まされつつ謝られた。 〈ラビナ達は悪くないよ。 当時は催眠術で、やりたくない事をさせられていたんだから。 それに没落が嫌なんじゃなく没落によって変わった周囲の態度が嫌だっただけだからね。〉 と握った拳を広げてラビナの頭を撫でた。 貴族学校は俺にとってトラウマだ。 以前マイルード家が伯爵だった頃に通っていた場所は没落の知らせが来た途端、手の平を返す様に敵となった。 同級生には罵詈雑言を浴びせられ、上級生には蔑みと憐れみの目で見られて退学した経験があるのだ。 当時マイルード家は有りもしない罪に問われていた為、没落前から冷たい視線や時々酷い嫌がらせをする者もいたのだが、その最終日で俺の貴族学校嫌いは決定的となった。 そこへ再び復学する。 緊張と不安と空回りする意気込みで俺は爆発寸前だった。
/1192ページ

最初のコメントを投稿しよう!