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砂埃舞う運動場。
声を掛け合う少年たち。
白球を追う真剣なまなざし。
初めてあの人と出会ったのは、中1の時。
野球部で丸坊主の彼が汗を流しながらボールを追いかける姿に目を奪われた。
バレンタインにチョコを差し出し初告白。
『・・・俺も好きだったんだ』
耳を真っ赤にしてそう答えてくれた彼は、私の初めての彼氏となった。
初めは照れくさくて、目を見るのも恥ずかしくて。
指先が触れるだけでもドキドキしてた。
手を繋ぐことにも慣れてきた中2の夏、
学校の榎の木の下で・・・初めてのキス。
そっと触れるだけのキス。
榎の葉からこぼれる黄緑色の光に包まれ、繋いだ指にそっと力を込めた。
高校も大学も同じところを選び、私たちは10年間ずっと一緒だった。
それから社会人になって2年目のこと。
24歳の夏。
───あの人は私の前から去ってしまった。
バイク事故で即死だった。
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