夏の追憶

3/9

38人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
砂埃舞う運動場。 声を掛け合う少年たち。 白球を追う真剣なまなざし。 初めてあの人と出会ったのは、中1の時。 野球部で丸坊主の彼が汗を流しながらボールを追いかける姿に目を奪われた。 バレンタインにチョコを差し出し初告白。 『・・・俺も好きだったんだ』 耳を真っ赤にしてそう答えてくれた彼は、私の初めての彼氏となった。 初めは照れくさくて、目を見るのも恥ずかしくて。 指先が触れるだけでもドキドキしてた。 手を繋ぐことにも慣れてきた中2の夏、 学校の榎の木の下で・・・初めてのキス。 そっと触れるだけのキス。 榎の葉からこぼれる黄緑色の光に包まれ、繋いだ指にそっと力を込めた。 高校も大学も同じところを選び、私たちは10年間ずっと一緒だった。 それから社会人になって2年目のこと。 24歳の夏。 ───あの人は私の前から去ってしまった。 バイク事故で即死だった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加