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『もういい加減、前に進まなきゃ、天国の彼だってずっと心配してるわよ?
あなたが彼の分まで幸せにならなきゃ、天国の彼だって浮かばれないわ』
もう何度も聞いた母の言葉にそっとアルバムを閉じた。
3年経ってもふさぎ込んだままの私に、親だけでなく誰もが似たような言葉をかけてくる。
「私が幸せになる?
そんなのあの人が望んでいるなんて、どうして分かるの?
・・・私が幸せになることをあの人は望んでなんていないわ・・・」
毎回同じ言葉を返す私に、毎回同じように溜息を吐かれる。
でも・・・
どうして赤の他人に死んだあの人の気持ちが分かるというの?
だって、あの時も誰一人知らなかったじゃない。
あの人がどうしてあの日、
あの海沿いの道をバイクで飛ばしていたのか
あの人がどこに向かっていたのか。
───誰も知らなかったじゃない。
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