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グッと、腕にさらに力を込められた。
きっと、もしかしたら、本気で言っているのかもしれない。
だけど、それすらも嘘かもしれない。
こんなにも疑心暗鬼な自分は嫌だけれど、信じることは怖くて仕方ない。
信じて、それを裏切られることが死ぬほど怖いのだ。
「先輩は……私のことを知らないでしょう」
ようやく口に出せた言葉。
先輩は目を丸めて、私を見た。
「知らないのは仕方ない。こうして面と向かって話をしたのは今日が初めてだし、学年も違うしな」
あっけらかんと、先輩は言い放つ。
私は嘲笑気味に笑って、泣きたくなる。
「だから、私なんかを誘ったりしちゃったわけですか」
私がクラスどころか学年全体からどう思われているのか。
上級生にも伝わっているものだと思っていたが。
「……なぁ、さっきからその"私なんか"ってなんなんだ?」
「私、クラスで浮いてるんです。協調性なんて無いですし、誰かと仲良くなろうとも思っていませんし、今朝見た通り、周りからはよく思われていないんですよ。そんな私なんかをバンドに誘うなんて、とても信じられる話じゃないです」
「……」
「本気にしろ、冗談にしろ、私を誘ったのは間違いです。先輩は目立つ人ですし、二度と関わりたく無いのが私の本音です」
さあ、手を離して。
どれだけ御門違いな話を持ちかけたのか、これでわかっただろう。
私はあなたとは住む世界が違うのだ。
あなたは日向で、私は日陰に居るべきで、それが正しいのだから。
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