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真摯に見つめられて、戸惑う。
変えたい?
いったい何を。
耳を塞いで何も聞こえないように過ごすような、こんな自分を?
「あるだろ?言いたいことも、やりたいことも、本当はもっとあるんだろ?」
知ってるんだぞ。
先輩の目がそう言うように細められて、私はドキリとする。
やりたいこと。
私が、真実そうしたいと思うこと…。
だけど。
首を振って、眉を下げる。
「……出来ませんよ。私は人に何かを言えるような人間じゃないし。誰も私のことなんか見ようとなんかしませんから」
まるで空気のような自分。
教室内で呼吸さえ出来ないような、ちっぽけな自分。
そんなヤツが突然何かを言い出したって、誰も見向きなんかするわけがない。
「決め付けてんのはお前だろ」
「決め付けてなんかいません。事実ですから」
「だから、それが決め付けなんだよ」
「じゃあ!誰が私の話なんかを聞いてくれるって言うんですか!!」
「俺がいま、聞いてる」
「…ッ」
まっすぐな目線。
逸らされることなんか無くて、どこまでも真剣な顔をして。
先輩は私の名前を呼んだ。
「陽来、逃げんなよ。俺ときちんと関われ。んで、お前の中のクソしょうもない生き方なんて捨てちまえ。思ってる本音、全部ちゃんと出せ」
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