1,テナー

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真摯に見つめられて、戸惑う。 変えたい? いったい何を。 耳を塞いで何も聞こえないように過ごすような、こんな自分を? 「あるだろ?言いたいことも、やりたいことも、本当はもっとあるんだろ?」 知ってるんだぞ。 先輩の目がそう言うように細められて、私はドキリとする。 やりたいこと。 私が、真実そうしたいと思うこと…。 だけど。 首を振って、眉を下げる。 「……出来ませんよ。私は人に何かを言えるような人間じゃないし。誰も私のことなんか見ようとなんかしませんから」 まるで空気のような自分。 教室内で呼吸さえ出来ないような、ちっぽけな自分。 そんなヤツが突然何かを言い出したって、誰も見向きなんかするわけがない。 「決め付けてんのはお前だろ」 「決め付けてなんかいません。事実ですから」 「だから、それが決め付けなんだよ」 「じゃあ!誰が私の話なんかを聞いてくれるって言うんですか!!」 「俺がいま、聞いてる」 「…ッ」 まっすぐな目線。 逸らされることなんか無くて、どこまでも真剣な顔をして。 先輩は私の名前を呼んだ。 「陽来、逃げんなよ。俺ときちんと関われ。んで、お前の中のクソしょうもない生き方なんて捨てちまえ。思ってる本音、全部ちゃんと出せ」
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