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氷菓と狐火
草木も眠る、真夏の丑三つ時。人知れず行われ、そして終わった激闘を想起しながら、主役たる二人は猫を愛でつつ昼の縁側で涼んでいた。
「凍真、今回も大活躍だったね。猫又の動きを冷気で止めて攻撃を防ぐなんて、さすが陰陽師の末裔だね」
「まあな。だが、最後にお前が悪霊を爆破したお陰でこの子は救われた。そこは誇っていいぞ、焔」
「うん…。でも、いつまでも凍真に頼ってばかりじゃいけないよね。ボクもいつか式神に選ばれた者として、悪さを働く妖怪を退治できるようにならないと」
狐面を被った少女が静かに決意を固めたのを見て、陰陽師の青年は小さく笑う。
「そうか。まあせいぜい頑張れよ。これ食うか」
「わっ、アイス!…しかも手作り」
「お前が妖怪退治に専念してくれたら、アイス屋でも開くかね」
半妖の少女と元化け猫がいるアイス屋なんて話題性は充分だろ――そんな冗談めいた笑い声は、入道雲に消えていった。
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