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たとえば君が傷ついて
くじけそうになったときは
必ず僕がそばにいて――――
「たとえばの話なんだけどさ」
そう言ってあいつは話し始めた。真剣なような、それでいてくだらなさそうな、そんな顔だった。
「この世界が狂っていたとして、自分だけが正常だと思ってたとしよう。でも、それが実は全くの逆で、自分が狂っていて世界が正常だったとする。そんな時、君ならどうする?」
それは、いつも通りの下らない問いかけだと思った。深いようでいて、そうでもない、意味のわからない下らない問いかけ。
だから僕は、いつも通りに適当に答えた。
「まあ、自分は狂ってないと主張するとか、世界が狂ってるんだと言うとか、何も出来ずにただ事実に愕然として、只管に震えてるとか?」
そこであいつは、いたずらっ子のような笑みを浮かべて言った。
「もしくは絶望して、自ら死ぬか、だ」
「そうだな。そういうこともある」
いつも通りの、よくわからない話だった。だから、僕はいつも通りにギターを弾きながら適当に答えた。
その二日後、あいつは自殺した。
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