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◇◇◇
窟
蝋燭の小さな灯火が窟をわずかながら照らしている。
玉玄と春栄以外は疲労と困憊のためか携帯食の強飯を食べた後寝てしまった。
「おかしいとは思わぬか」
春栄の言葉に玉玄は頷いた。
「護宮や護祠が異常な数でケガレに触れておるの。」
玉玄栄は般若湯、言うなれば酒。を瓢箪に口をつけて呑んだ。
春栄も自分用の酒の入った瓢箪を軽く揺らした。
ちゃぷんちゃぷんと音が鳴る。音からするに残り少ない。
「伝にあった、神と魔の戦いじゃろうか」
「しかし、魔は社に入れはせんじゃろ」
「だよなぁ…。考えられるは人が関わってるか」
「また戦を望むやつがおる、つーことか。」
春栄は惜しむように酒をちびちび呑んだ。
「先の戦では、あまり護宮は壊れんかったの」
「比叡は焼き討ちにあったがな。」
しばしの沈黙。
「第六天魔王が新たな依代を見つけたてっことは」
「高野が徹底的に封じ込めたじゃろうて」
「だよなぁ…。」
「明日、本山に戻ればなにか分かるじゃろうて」
春栄は空になった瓢箪を脇に置いた。
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