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◇◇◇
富士山隠れ里
朝からしとしとと雨が降り続いている。
オリトは神殿のうちから雨を眺めた。
「結界が…。また壊れた。」
手のひらを器とし雨を受け止めた。
「…。」
眉をひそめる。
おかしい、雨に神力が無いなんて。神力の宿らない雨は大地に実りをつけない。
「巫女殿!」
雨に打たれながら長がやってきた
「どうされました?」
「作物が枯れはじめてる!」
緊迫した表情で長は言った。
「なんですって!」
七人の巫女は一同に驚いた。
「ヒモロギを回ってみましょう。」
コトの言葉に同意する。
「長殿、備えを」
「わかりました。神弓を用意します。」
雨の中、順にヒモロギを見て回る。まずは南のヒモロギ。
ヒモロギは神が降りる場所である正方形の形に拓けており、この空間だけは雑草が一本も生えていない。
中央にあるのは大きな丸い石である。石の四方には榊が植えられている。
いつもは清浄たるこの場所の気が淀んでいる。
「おかしいですわ。昨日見た時はなにも…なにもなかったのに」
ヒナが青冷めた。
「先に他のも見て回って対抗策を考えましょう。」
西のヒモロギも同じような丸い石が祀られている。しかし
その石が真っ赤に染まっていた。
「ひぃっ」
「きゃあぁぁ!」
辺りに散らばるのは黒い羽根。
黒と赤がヒモロギを占める。
おそらく赤は鴉の血だろう。
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