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◇◇◇
シャラン。
山法師達の読経が終わると錫杖が余韻を残すように鳴った。
「これで大丈夫じゃろ」
「確か…こっちじゃ」
玉玄が鬱蒼と茂る道を躊躇いなく進んだ。
春栄、志元(シゲン)、秋喜、秀英、道行、高哉が続いた。
しばらく進むとぽっかりと拓けた場所に出た。
中心には小さな祠がある。
「おお、ここじゃここじゃ!」
玉玄が祠の前にかがんで手を合わせた。
秀英が鼻を鳴らした。
「なんか、臭いません?」
「確かに、この臭いは…。」
秋喜が臭いの元を探ろうとするように辺りを見回した。
「それに、ここは護祠か?」
道行が首を捻った。
バコッ。
玉玄が祠の戸を開けた。
開いたとたん黒いモヤが飛びかかってきた。
玉玄は、跳びずさってかわした。
ジャンッ
春栄が狙いを定めて黒いモヤに錫杖を突き刺した。
『オンベイシラマンダヤソワカ!』
紡ぐ真言は天魔降伏。
黒いモヤは跡形もなく霧散した。
「助かった、春栄。」
「おう……。これは」
春栄は祠の中身、御神体を見て愕然とした。
御神体は石だったのだろう。
真っ二つに崩れていた。
「ここもか。」
苦虫を潰したような顔で玉玄が呟いた。
「権現山と同じだな。」
最近、山の祠が神力を無くしている。
何者かが関与しているに違いない
「ここを修復するぞ。」
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