6人が本棚に入れています
本棚に追加
◇◇◇
錫杖を構えて読経すること五時間。日は暮れてすでに夕刻である。
祠には新しい神力を宿らせた石(高哉が山中を走り回って見つけた。)に護符を張り付け納めた。
「うしっ、これで大丈夫じゃろ。」
疲労も感じさせず玉玄が頷いた。
「一度、本山に戻って報告しとくか。」
春栄も疲れた顔をしてはいない。
他六名は地べたにへばりついている。
「修行がまだまだ足らんの。」
一番若いはずの高哉が一番へばっている。
「早よ動かんと夜になるぞ。」
「は、はい」
錫杖を杖代わりになんとか立ち上がる。
「確か、この先に窟があったはずじゃ」
玉玄が前方を錫杖で示す。
「ん。こっちじゃったかの」
と、反対方向をむいた。
「か、神様、仏様、どうか師が迷わずにお導きください。」
蚊の泣くような声で道行が天に祈った
最初のコメントを投稿しよう!