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◇◇◇ 錫杖を構えて読経すること五時間。日は暮れてすでに夕刻である。 祠には新しい神力を宿らせた石(高哉が山中を走り回って見つけた。)に護符を張り付け納めた。 「うしっ、これで大丈夫じゃろ。」 疲労も感じさせず玉玄が頷いた。 「一度、本山に戻って報告しとくか。」 春栄も疲れた顔をしてはいない。 他六名は地べたにへばりついている。 「修行がまだまだ足らんの。」 一番若いはずの高哉が一番へばっている。 「早よ動かんと夜になるぞ。」 「は、はい」 錫杖を杖代わりになんとか立ち上がる。 「確か、この先に窟があったはずじゃ」 玉玄が前方を錫杖で示す。 「ん。こっちじゃったかの」 と、反対方向をむいた。 「か、神様、仏様、どうか師が迷わずにお導きください。」 蚊の泣くような声で道行が天に祈った
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