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優しいことは優しい。
だが、その優しさも心がない。
周りも本人もそう思ってはいないだろうが、私だけかもしれないが、志音が時々…空虚に見えて胸が痛む。
莎弥の死は私達を過去に縛る鎖のようで、幾重にも巻き付けられた鎖の重さと冷たさで息苦しくて生き苦しくもある。
それを受け入れる覚悟をした志音は誰か支える人がいるのだろうか?
彼の人生に寄り添う強く優しい人はいるのだろうか?
私が女性なら、志音の人生に寄り添うこともあったかもしれないが、私は男だから寄り添うことはできない。
気持ちを分かち合うことはできるけどな。
「あのさ七っち、百面相してるとこ悪いんだけど、もう俺の家に着いたんだけど…」
「え!?私は結局泊まることで話は決着したのか?」
「強く否定してたけど、最終的には納得したみたいだからいいかなと思って」
ここまできたなら、もう泊まることにした方がいいな。
親には後で連絡するか。
「お邪魔します」
「どうぞ♪何もお構いできないけど」
ヒールの高いサンダルを脱いで、志音の家のフローリングを踏んで、やっと不安定な足元じゃなくなったと感じた。
「七っち、先にシャワー浴びたら?汗だくで気持ち悪いでしょ?」
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