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そのことに衝撃を受けて、だんだんと頭の中がクリアになっていく。
私が女装しているのは、莎弥を忘れない為。
志音と女装姿でデートをするのは、莎弥を忘れない為。
私は志音にとって…莎弥の代わりだ。
「七瀬…?」
「違うだろう?七瀬じゃなくて、莎弥だろう?」
私の身体から離れた志音の方に身体を向けて、きちんと言わないと。
ただ、莎弥の為と言い訳する自分の胸がひどく痛んで、志音の顔を見ることができない。
「それ本気?」
「本気だ。それに私に莎弥の代わりを提案したのはお前だろう?」
自分の言葉が鋭いナイフになって胸を抉る。
けれど他にどう言えばいいのか、私には自分を擁護できるほどの語彙力はない。
だから志音の気持ちを思いやった言葉も出てこないんだ。
「莎弥の代わりになるんなら顔上げてよ。それとも顔も上げられないくらい小さい覚悟なんだ?そんな小さな覚悟ならやめてくんない?莎弥を侮辱してるとか思わないの?」
志音の言う通りだ。
誰かの代わりになるということは、その人の生き方をなぞって自分をなくさないといけない。
ただの真似じゃなくて、その人にならないと意味がない。
莎弥の代わりになるなら、私は莎弥にならなければ。
志音と何より私が莎弥を求めているのだから。
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