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私は莎弥になる決意を固めて顔を上げる。
胸の痛みは消えない。
いや、これからも消えないだろう。
それでも私は莎弥の代わりを選んだんだ。
「覚悟を決めたなら、俺もその気持ちに応えないとな。そうだろ莎弥」
私を莎弥として微笑みかける志音に、自分の気持ちを知られたくなくて抱き付いた。
涙が溢れて止まらないのに気付いたのか、志音は強く抱きしめながら、あやすように頭をポンポンと軽く叩くように撫でる。
七瀬じゃなくなるのはつらいのに、志音のさっきの表情を思い出して、私は莎弥になれば志音を一人占めできるんじゃないかと涙で歪む浴室の景色を見ながらそう考えていた。
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