3人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
「い、行こうぜ…」
「お姉さんまたね」
暴力沙汰にならなくてよかったと思いながら、小さく溜め息をつくと、志音の手が離れる。
「さすがに声は上げられなかった?」
「声の低さで男だとバレるからな。だが助かった、ありがとう」
「あれ?莎弥ってそんな喋り方だっけ?そんな七っちみたいな喋り方は似合わないよ♪」
志音?
私は七瀬で莎弥じゃない…何故?
まさか…莎弥になると言ったから、莎弥として付き合うってことなのか…?
「莎弥?」
「えっと……そうだね、お兄ちゃんみたいな喋り方はおかしいよね?ごめんね♪」
私は上手に笑えているだろうか?
きちんと莎弥になれているのだろうか?
「莎弥、無理して笑顔になんなくていいよ。ナンパ初めてでびっくりしたんだよな?」
やっぱり笑顔は引きつっているんだな。
私が笑えないのは、ナンパのせいじゃないのを分かっているクセに、何でそんなふうに言うんだ…。
「莎弥?」
「っ!帰る!私は…私は莎弥じゃない!」
莎弥になるとか莎弥の代わりとか、私は本当にできると思っていたのだろうか?
どこかで志音が「やらなくていいよ」と言ってくれるんじゃないかと期待していたんじゃないか?
最初のコメントを投稿しよう!