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こんなに志音の声と言葉が胸に刺さるとは思わなかった。
一つ一つが重たくて、一つ一つが鋭い矢のようで、私はよけることも逃げることもできない。
「莎弥…!」
志音が私の腕を引いて、自分の方へ抱き寄せて、触れるだけのキスを唇に落とす。
「莎弥、泣かないで。もうナンパとかないから」
「……もういい。嫌がらせは楽しいか?莎弥の気持ちは考えているのに、私の気持ちは考えないんだな」
頬が濡れていることに今気付いた。
志音の優しさが私ではなく、莎弥にしか向いていないのがつらくてたまらない。
また独占欲が出たんだろうか?
莎弥に敵意を向けてしまうような、莎弥に嫉妬しているような気持ち…。
「それ…そのまま返すわ。お前は俺の気持ち考えてくれないワケ?俺は七瀬と付き合うのもいいと思ったことあるけど、お前は全部莎弥に結び付けて、莎弥になるとまで言い切ったんだよ。なら、お前の気持ちは、自分を七瀬としてじゃなくて莎弥として見てほしいってことになるだろ?」
「……そう…だな…」
志音の言う通りだ。
私は志音に気持ちを押し付けて、本当の気持ちは認めたらいけない気がして、無理に莎弥に結び付けたんだ…。
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