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莎弥になると言ったのに、莎弥として扱われたくなくて、志音に何度も「莎弥」と呼ばれると、心の中の本当の私が、七瀬が悲鳴を上げる。
心の中でも莎弥でいようとする私と七瀬でいたい私が争う。
いっそ心が壊れてしまえば楽になれるんじゃないかと思うほどだ。
何もかも忘れてなかったことにできれば、私は本当に救われたかもしれない。
けど、志音が絶対にそれをさせない。
志音は私を引っ張り上げると同時に、共に堕ちる道を選んだのかもしれない。
一人では耐えられないなら二人で堕ちればいい。
私達は永遠に有効な『莎弥』という免罪符があるから許される。
許されたいのに許されたくない。
解放されたいのに囚われていたい。
欲しいのに不要にする。
私達はこのループが心地よくていつまでもこのままなんだろうか?
本当はこのループをやめないと戻れなくなりそうだ。
「志音…私は私なりに莎弥をやる。だから…時々でいいから七瀬を、お兄ちゃんのことを思い出してあげてね。お兄ちゃん寂しがり屋なのよ♪」
涙の乾いた顔で一番の笑顔で志音に笑いかける。
私なりの莎弥は、きっと違和感がありすぎて困るくらいの莎弥なのは間違いない。
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