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空虚な世界にどっぷりと浸かった私を、ほとんど無理やり引っ張り上げたのだ。
莎弥の葬儀の時のような悲しみに満ちた目は、今や全ての迷いを吹っ切ったかのような強い目をしていて、その目には虚ろな表情の私が映っていた。
私は……こんなにひどい顔をしていたのか…?
「俺は莎弥を何もかも受け入れる。死んだことも好きだったことも全部。それくらいしかできないからな…ってか思いつかねーわ」
「志音…!」
「俺はそういうやり方しかないワケ。七っちが…七瀬(ナナセ)がどう思うかは分かんないけどよ」
その言葉は私を責めるものではなかったけれど、莎弥は本当に死んだということを明らかにした。
私はその時に初めて涙を流して莎弥の死を悲しんだ。
誰も私を責めなかった。
志音は私に優しく笑いかけた。
私はそれを甘い幸せと思ったのがいけなかったと、後に思い知ることになる。
「七瀬は莎弥を完全に忘れるなんて無理だろうからさ、莎弥みたいな格好を定期的にすればいいよ。そしたら莎弥を感じられるでしょ?」
「女装をしろと?冗談じゃない…!」
「女装じゃないよ。莎弥になりきるんだから。本格的な莎弥のコスプレみたいな?」
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