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何で知っているんだ、そんなふうに思っていることを…。
私が密かに思っていたことを、志音も思っていたのだろうか?
「俺も七瀬も莎弥って傷が癒えない。傷口が膿んでも痕が残っても、俺達は傷口を舐め合うことはない。舐め合えば俺達は莎弥を免罪符にして、底の底まで堕ちてしまうし。分かる?」
「回りくどいな。ハッキリ言えば?」
「せっかくの気遣いだったのに。ハッキリ言わしてもらうと、七瀬を取るな、話すな、近寄るな」
「……独占欲強すぎだろ」
「志音…」
悪態をついている優くんには悪いが、志音の言葉がじんわりと心に染み込んで、更に深い部分の思いまで同じだと感じて嬉しい。
本当は傷口を舐め合って堕ちても、誰も止めたり咎めたりしない。
私達が『莎弥』を切り札にして使うのだから、周りも釈然としなくても許すしかないと思ってしまう。
けれど、志音は私がそう使うと分かっていたから、全部私の使う免罪符を受け止めた。
そして、志音はそれを切り札にして私を縛り付ける。
私達はそれが心地いい。
「は~~…よく分かりました。七瀬お兄さんがこいつを好きなのも本当みたいですし、今回は負けを認めます。"今回は"ですけど!」
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