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何だ…私も志音を離すつもりはないんだな。
そうだ、私達の道はゴツゴツした岩山の道で、平坦な道ではないから、互いに手を伸ばして補い合わなければならない。
「優くん…私も志音でないとダメなんだ。確かに志音は見た目は軽薄かもしれないが、それでも意志は強くて、私も莎弥もどうしようもないくらい魅せられる。兄妹揃って同じ人を好きになって…おかしいだろう?」
「七瀬…」
志音が大型の犬かネコ科の猛獣のように、私の首にすりすりと頭を擦りつける…泣かないようにしてくれているんだな。
「私は大丈夫だから」
「……はぁ、そんなに見せつけないでくださいよ。何だか僕がとっても間抜けみたいじゃないですか。でも諦めませんから!今はまだ子供だけど、今の七瀬お兄さんくらいになったら、絶対に奪いに行きます!僕に振り向いてもらうんだ!」
優くんらしいまっすぐな決意。
たとえ私が志音を選んでいなくても、優くんを選ぶことはなかっただろう。
それは私が女性だったとしても同じだ。
彼の純粋な心に触れるのは勇気がいる。
子供だけど大人に近くて、けれど大人からとても遠い…そんなアンバランスさを内包しながら曇りのない瞳。
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