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「お前はよくても早苗ちゃんが熱中症になる」
「あ、そっか」
「お前だけ話してて、私達は先に公園に行っててもよかったんだぞ?」
「そんな冷たい。俺達は新婚夫婦なんだし、もうちょっと仲良くしようよ♪」
「いつ私とお前は結婚したんだ?指輪もなければ、婚姻届も見ていないが?」
そんなものを用意しても、同性同士は結婚なんてできないしな。
それに私達はそれぞれの家の一人息子なのだから、同性婚とまではいかなくても、パートナーシップ制度を利用もできない。
現実は何も希望を抱かせてくれない。
手を伸ばしても砂のように手からこぼれ落ちていくだけ。
だから、私は希望を持つことを諦めた。
それなのに、今は少しだけ希望を持つのも悪くないような気がする。
今こうして志音が側にいてくれているから、私も笑ったり軽口が叩けるほど持ち直したんだな。
何となく口元が綻びそうになった時、志音が何かに気付いたように、遠くの方に手を大きく振る。
知り合いでも見付けたのかと思い、私も遠くの方を見たが、志音が誰に手を振ったのかさっぱり分からない。
「浩一(コウイチ)さん、こっちこっち!」
「志音くん、ちょっと待ってて!」
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