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(そんな彼に名前を呼ばれた……)
さっきの倉田を追ってきたもう1人の部員は、あの滝川良司だ。
同じクラスなのだから彼が僕の名前を知っていてもおかしくはない。
でも僕はクラスに馴染めていないせいでクラスメイト、ましては彼となんてろくに会話もしたことなかった。
おまけにクラスでは幽霊のように気配を消している。
いや、気配が "消えている” が正しい。
だからあの時、彼にそんな自分の名前を呼ばれて驚いた。
彼に名前を呼ばれた時のことを思い出すと、なんだかドキドキしてくる。
それに、彼は花壇の手入れ作業を手伝ってくれると言った。
(で、でも、手入れの手伝いだなんて……)
実際、花壇の被害は今回だけじゃない。
グラウンドはサッカー部以外の運動部も利用するため、いろんなものが花壇目がけて飛んでくる 。
イタズラだってされる。
酷かった時には全部の花が抜かれてめちゃくちゃに荒らされてたぐらいだ。
僕はそのたびに花壇の手入れをした。
そのため、作業には慣れている。
それに、どんな理由であっても花壇の手入れをしていると楽しかった。
だから、彼にわざわざ手伝ってもらうだなんて迷惑をかけたくない……。
(部活終わりだからきっと疲れてるだろうし……やっぱり、大丈夫って断わった方がいいよね……)
僕がそんなことを思っていると、ガラガラと教室のドアが開いてジャージ姿の彼が入ってきた。
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