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「よ。結構待たせたろ?ごめんな」
彼のジャージはグラウンドの砂で汚れていた。
きっと全力でボールを追いかけていたんだ。
こんなたいしたことないことでも僕の心は動く。
「う、ううん。大丈夫だよ」
「いやー、山田が話し始めちゃってさ…」
山田とはサッカー部の顧問で、生徒の間では話がいつも長くなるからつかまったらめんどうだということで有名な先生だ。
「…ぶ、部活、お疲れさま」
「おう、サンキュ」
彼は自分の席にいくと、荷物から何かをゴソゴソと探しはじめた。
「あった、あった。神月、もう行けるぞ」
彼は見つけたそれを手に持って僕の方にに近づいてくる。
「あ、あの…ちょっと待って」
「ん、どうした?」
「いや、あの…あの、滝川くん部活で疲れてるでしょ?だからその…手伝うだなんてしなくて大丈夫だよ…って……」
「…それは、俺が手伝うのは迷惑ってことか?」
「ち、違うよ!そうじゃなくて…あの…その……」
「だったらいいじゃないか。もう道具だって借りてきちまったし」
そう言って彼は手に持っていた物を僕の前に差し出した。
それは軍手とスコップだ。
きっと園芸部顧問の東野先生に借りてきたのだろう。
僕は園芸部の部員ではないけど、東野先生はいつも一人で花壇の手入れをしている僕のことを気にかけてくれて、いろいろと助けてくれるのだ。
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