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ぼくは、くまのくまみー。小学1年生。
山の奥で、おとうさんとおかあさんとおねえちゃん、そしてぼくの4匹で暮らしている。
学校に行ったり、森で木に登ったり、川で泳いだりして毎日を過ごしている。
おとうさんは、毎朝コーヒーを飲みながら、めがねをかけて新聞を読んだり、
テレビでむずかしいニュースを見てから会社に行っている。
おとうさんのめがねをかけようとしたら、
おとな用のめがねはおとなになってからじゃないとだめだと、怒られちゃった。
学校からの帰り道、いつものようにひとりで寄り道をして、
川の魚を眺めたり近くの花を摘んだりしていると、川上から大きな葉っぱが流れてきた。
よく見ると葉っぱの上になにかが乗っている。
葉っぱを引き寄せて見てみると、めがねが乗っていた。
おとなのくまが描かれている、緑色のめがね。
「やったー」
おとうさんのめがねは青色だから色が違うけど、これは、おとな用のめがねだ。
うれしくなって、めがねをかけてみた。
上を見たり、下を見たり、右を見たり、左を見たり。きょろきょろ、きょろきょろ。
「ちょっと! わたしを踏まないでよ」
足元の方から声が聞こえてきた。
「あっごめん」
ぼくは、慌てて飛び跳ねて、少し横に移動したけど、
足元にはなんにも見えない。あるのはつぶれた雑草だけ。
「もう! 今度はあたしを踏んでるよ!」
今度は違う声で聞こえてきた。また、足元からだ。
ぼくは、また慌てて横にずれた。
「おい! おれを踏むな!」
「ごめん!」
けれど、やっぱり雑草があるだけで、ほかにはなんにもなかった。
おかしいな。誰かのいたずらかな?
草むらの影とか、木の上を見上げてみたけど、誰もいなかった。
そんなことをしているうちに、日が傾いてきて空が夕焼け色に染まった。
ぼくは、めがねをポケットにしまい、走って家に向かった。
家に近づくにつれて、ごはんのいいにおいがしてきた。
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