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「ただいまー」
台所にいるおかあさんのところに向かった。
「おかえりー。手洗いとうがいちゃんとしなさいよ」
おかあさんは、お魚をまな板の上に乗せながらそう言った。
おとうさんが捕ってきたばかりの、生きたお魚。ぴちぴちとはねている。
ぼくは、おかあさんの後ろでポケットからめがねを取り出してかけてみた。
「おれを食べるのか? だったら、きちんと残さずに全部食べてくれよな」
「おかあさん! 今、なにか聞こえなかった?」
「えっ!? なにも聞こえなかったわよ」
そう言いながら振り返って、ぼくの方を見ると
「ちょっと、そのめがねどうしたの!? とりなさいっ!」
そう、怒った。
「川から流れてきたんだよ」
「だめっ。今すぐとりなさい」
「ちぇ」
しぶしぶ、めがねをとって、洗面所で手を洗ってうがいをした。
めがねは、自分の机の引き出しの奥にしまった。
「ねえ、ねえ、おかあさん。さっきのは誰の声なの?」
「おかあさんには、聞こえなかったわよ。テレビから聞こえてきたんじゃないの?」
「でも、おかあさんの方から聞こえたよ?」
「きっと気のせいよ。おかあさんには聞こえなかったもの」
リビングに行くと、おねえちゃんがテレビを見ていたので
やっぱりテレビからの音だったのかもしれない。しばらく、おねえちゃんとテレビを見ていると、
「ごはんができたわよー。みんなおいでー」
おかあさんが呼びにきた。テーブルにつくと、おいしそうなごはんができあがっていた。
ぼくが大好きなお魚。おかあさんが焼くととびきりおいしいんだ。
おなかがすいていたぼくは、一番にお魚を食べはじめた。
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