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「こらっ! ちゃんと手を合わせていただきますと言いなさい」
おかあさんが怒る。
「ほあい。いただきまあす」
ぼくは返事もそこそこに、もぐもぐ食べた。けれど、お魚の皮の部分は少し苦手なので残した。
骨をとるのも苦手で、お魚の身もうまくとれなくて、お皿はぐちゃぐちゃ。
あと、緑の野菜も苦手だから、食べなかった。
「ぼく、宿題してくる」
立ち上がって、部屋に向かおうとしたら、おかあさんがまた怒った。
「こらっ! ごちそうさまを言いなさいっ。たくさん食べ残してるじゃない!
栄養があるんだから全部食べなさい!
それに、お茶碗にもごはん粒たくさんついたままじゃないの! まったくもう」
「ほあい。でも、もうおなかいっぱいなんだよ」
ぼくは、おかあさんがひきとめるのも聞かずに部屋に行って宿題をはじめた。
漢字の書き取りの宿題。ひとつの漢字を10個ずつ書いていく。それが10個ある。
しばらくすると、飽きてきた。えんぴつを鼻の上の乗っけてみたり、
立ち上がって、おしりふりふりへんてこなおどりをおどってみたり、
エアギターをしたりして遊んでいた。
「あ。そうだ」
ぼくは、めがねのことを思い出し、引き出しから取り出した。
これをかけてから変な声が聞こえてくるようになったんだよな。
耳にかけるところに、スピーカーがついているのかと見てみた。
ぐるぐるまわしていろんな方向から見てみた。けれど、そんなものはついていないみたい。
やっぱり、さっきの声はおかあさんの言うとおり、テレビの音だったのか。
それとも気のせいだったのか。でも、あの川での声は?
同じクラスのくますけくんが、ふざけて隠れながら話していたのかのかもしれない。
ま、いっか。
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