くまのおとな用めがねのお話。

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めがねをかけてみると、声が聞こえてきた。 「ぷぷぷ。くまみーのへんてこなおどりおもしろいな」 窓があいていたのかとびっくりして、見てみたけど閉まっている。 部屋を見渡したけど、誰もいない。 「誰? どこから話してるの?」 「サボテンだよ。サボテン。目の前の」 「え!?」 ぼくの机の上には、まあるいサボテンがひとつある。まさか、これ? サボテンを指でつんつんとしてみた。 「あ、いてっ」 「そりゃあ、おれのとげさわると痛いよ。ばかだなあ」 「ねえ、ほんとうに、サボテンがしゃべってるの? ねえ、どうしてぼくは、サボテンの声が聞こえるようになったの?」 「たぶん、そのめがねじゃねえかな」 「やっぱり、このめがね!」 「それ、おとな用のめがねだろ? こどもがかけたらだめなやつ」 「・・・うん」 「はずした方がいいと思うぜ」 「どうして?」 「だって、それおとな用だろ? だからだよ。見たくないものや知りたくないものまで見えちまうぜ。 そうそう、きみは、おれに水をかけすぎだから、もう少し減らしてしてくれよな。 サボテンはあんまり水が必要ないんだ」 「そうだったの。ごめん」 「あ、あと、机の上ばっかりじゃなくて、たまには、日当たりのいい窓にも置いてくれよな」 「あ、ごめん」 「あ、あと、もうそろそろ植え替えてくれよな。根っこが土の下でぎゅうぎゅうになって 絡まってるんだ。水はけが悪くてこのままだと、根っこがくさってしまうよ」 「・・・あ、ごめん。植え替えるよ」 「植え替える時期は、春か秋にしてくれよな。寒すぎたり、暑すぎたりする季節はごめんだぜ」 「・・・え、あ、うん」 「あ、あと、それからさ・・・」 注文の多いサボテンだなあ。
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