くまのおとな用めがねのお話。

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「・・・くまみーの足元にクモがいるぜ」 足元を見ると、1センチほどの黒いクモがいた。ぼくは、びっくりして飛びのいた。 「ひゃあ!」 「やあ、こんばんは。おいらを踏まないでくれよ」 「え! クモもしゃべれるの?」 ぶ~ん。 どこからかハエが部屋の中に入ってきたようで、飛びまわっている。 すると、クモは、ハエを追いかけはじめた。ハエは、叫んで逃げ惑った。 「わあ!!!!!! やめてくれえええ!!!!!」 そんな叫び声もおかまいないし。 クモは、両手をあわせて「いただきます」と丁寧にいうと、ハエをぱくりと食べた。 「ちょっと、クモくん! ハエがかわいそうじゃないか! ひどいよ!」 ぼくは怒った。 サボテンくんが言う。 「くまみーは、さっき、お魚を食べたんでしょ? それとおんなじじゃないか」 「だって、お魚は、食べものなんだもん。毎日食べているぼくのごはん」 「ハエは、クモにとってのごはんなんだよ。くまみーとおんなじなんだよ」 「ち、ちがうよ!」 ぼくは、頭の中がぐるんぐるんとした。意味がわからなくて、なんだか、涙がでてきた。 めがねをとって涙を拭くと、さっきまでの話声が聞えなくなった。 やっぱりこのめがねをかけると、生き物や植物の声が聞こえるようになるみたいだった。 川で聞こえた声も、雑草から聞こえた声だったんだ。 もう一度、めがねをかけようとしたとき、部屋の中におねえちゃんがはいってきた。 「宿題終わったの?」 「ううん、まだ」 「早くしないと、怒られるよー」 ぼくは、めがねをかけたくてうずうずしたけど、おねえちゃんが隣の机で本を読みだしたので、 めがねをかけることはできなかった。めがねのことがばれたら、きっと、 おかあさんに言いつけられる。だから、おねえちゃんには内緒にしないといけない。 ぼくは、サボテンくんとクモくんの視線を感じながら宿題の続きを始めた。 けれど、さっきのサボテンくんの言葉が頭から離れなくて 宿題に集中できなかった。
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