くまのおとな用めがねのお話。

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お魚を食べることは、ぼくたちくまにとっては当たり前のことで、 おとうさんもおかあさんもおばあちゃんもおねえちゃんも、もちろん食べてる。 学校の給食にだってでるから、先生だって友達だって、みんなみんな食べてる。 かわいそうだなんて、誰も言わない。 だって、お魚はなんにも言わないから。叫んだり、声を上げたり、痛がったりしないから。 あ。もしかしたらさっきの台所での声は、まな板の上のお魚のだったのかな。 おねえちゃんが同じ部屋にずっといたから、 めがねをかけるチャンスがないまま、ぼくはねむりについた。 朝起きると、サボテンくんは、無言のままいつもと同じように机の上にいた。 クモくんも、サボテンくんの横にちょこんといる。「おはよう」と、声をかけて、ぼくは学校に向かった。 野原にはたくさんのいろんなお花が咲いていた。 名前も知らないお花がこんなにもたくさん咲いていたんだと、あらためて気づいた。 地面には、だんごむしやありんこ、たくさんの小さい虫が歩いていることにも気づいた。 いつもの景色が全然違って見える。いつもと同じ学校まで道のり。 めがねをかけていないぼくには、声は聞こえてこないけど、 きっと、みんなたくさんお話をしているはず。ぼくは、踏まないように気をつけながら進んだ。 学校の給食に、お魚が出たけど、ぼくは、食べることができなくて、 先生が体調でも悪いんじゃないかと心配してくれた。 先生は赤いめがねをかけている。
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