くまのおとな用めがねのお話。

8/10
前へ
/10ページ
次へ
「ちょっと、おなかが痛いんです」 ぼくはうそをついた。 先生はやさしくて、給食は食べなくてもいいよ。と、 先生がおやつに持ってきていたクッキーをみんなには内緒だよ。と言ってこっそりとくれた。 学校が終わると寄り道をせずにまっすぐに家に帰った。 足元のだんごむしやありんこを踏まないように気をつけながら。 サボテンくんと、クモくんとお話がしたくて、急いで家に向かった。 「ただいまー」 「あら。おかえりなさい。今日は早いのね。手洗いとうがいしなさいよー」 「うん。わかった。ごはんができるまで宿題しとくねー」 ぼくはすぐに、自分の部屋へ行った。昨日の話の続きがしたくて、めがねをかけた。 「おかえり。くまみー」 「おっす。おかえりー」 サボテンくんとクモくんがぼくの机の上からあいさつをする。 「ねえ、ねえ、昨日の話の続きなんだけど。 お魚もぼくたちくまに食べられるのは、とても嫌なの? 苦しいの?」 サボテンくんは答えた。 「おれは、魚は魚なりの痛さや苦しさは感じていると思うぜ。 それは、くまのくまみーが感じる痛み、サボテンのおれが感じる痛みと一緒なのかもしれないし、 違うのかもしれない。お互いに体験したことがないから一緒かどうかはわかんないよね。 でも、生きてるんだから、できれば死にたくないし、食べられたくない。 その気持ちは一緒だと思う。魚と話したことがないからわからないけどさ」 「じゃあ、お魚をここに連れてくるよ!」 そう言ったけど、お魚がいる台所には、おかあさんがいて、持ち出すことはできなかった。 川にいるお魚に、直接話を聞きに行こうと思ったけど、 外はもう暗くて、川に行くには危険な時間だった。 部屋に戻って、お魚を連れてこれなかったことを説明すると、サボテンくんは話の続きをはじめた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加