くまのおとな用めがねのお話。

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「きみの大好きな魚や、牛、豚、鶏の生き物たち。おれの仲間の植物の木の実や、 野菜などの葉っぱ、お米などの穀物だって植物だ。 それぞれが一生懸命に生きて、成長している。 その命をいただいて、ほかの生き物が生かされているんだ。そういうふうにできているんだ」 クモくんが続けた。 「おいらは、今食べる分だけ食べる。命を無駄には奪わない。 食べる前は、いただきます、と言って心から感謝する。 そして、なるべく痛くないよう苦しくないように、一瞬で食べる。 生きたままいたぶったりなんかは、絶対にしない。それがマナー。紳士ってもんさ。 きみは、毎日おかあさんに料理をつくってもらっているんだろう? 料理をするのにも、手間も時間もかかる。大変な作業を毎日、やってくれてるんだ。 いただきます。とはおかあさんに感謝する言葉でもあるんだよ」 そしてもうひとつ教えてくれた。おとな用のめがねには、生き物と話せるこのめがねのほかに、 新聞やテレビを見ると文字に書かれたことだけじゃない、 裏側の真実が見えるめがねがあるんだってこと。 そしてもうひとつ、嘘を見抜くめがねもあるんだってこと。 「くまみー。ごはんができたってー」 おねえちゃんが部屋まで呼びに来たので、ぼくは、慌ててめがねを引き出しにしまって ダイニングに向かった。 テーブルの上には、ほくほくのごはんに、甘辛く炊いたお魚の料理、 緑の野菜たっぷりのサラダが並んでいた。 ぼくは、手を合わせて「いただきます」と、ゆっくりはっきりと言った。 「あら、怒られなくても自分からちゃんと言うようになったのね。えらいわね」 ぼくは、命をくれたお魚や、料理をつくってくれたおかあさんに感謝しながら ゆっくりと噛みしめながら食べた。 「ごちそうさまでした」 「あら、お魚も皮まで全部キレイに食べたのね。えらいわ。 ごはん粒も、お茶碗に残ってない。えらくなったわね」 ごはんを食べ終わってからも、サボテンくんとクモくんといろんなことを話した。 しりとりをして遊んだりもした。 そんなとき、ふとサボテンくんが言ったんだ。
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