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「斎…」
「なんだ?」
「…えと、なんでもない」
「変なヤツ」
斎の声に笑みが混じる。
この状況に耐えられず、何か話をしようにも、何を話していいかわからない。
斎相手に何を話していいのかわからなくなるなんてこと、今までなかったのに。
「あの…もう支えてくれなくて大丈夫だよ?」
「お前は危なっかしくて、離すと不安だ」
そう言うと、抱きかかえる腕に力を込めた。
さっきから、心臓のバクバクが収まらない。
どうしようかと考えれば考えるほど、頭の中はパニック状態になってくる。
本当に死にそうだと思い、私はぎゅっと目を閉じる。
その時、髪に吐息を感じた。
驚いて目を開けると、斎の端正な顔が見えて、切なげな視線とぶつかる。
しかし、そう思ったのもつかの間、斎はいつもの表情に戻って、抱きかかえる腕を解いた。
「電気つけるぞ」
「う…うん」
パチッという音がして、一気に周りが明るくなる。
急に明るくなったので一瞬目がチカチカした。
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