scene.6

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後で杏奈から聞いた話では、いきなり私と南条君が打ち合いを始めたのを見て、藤代君達は止めに来たらしい。 でも、途中で止めるのが勿体ないと思ったらしく、そのまま観戦、自動的に他の子達も観戦する羽目に、という流れだったそうだ。 あの後、とりあえずそれぞれのグループに戻って順調にメニューを消化していき、滞りなく(?)ワンポイントレッスンは終わった。 私はしばらくまともに動けなかったので、南条君が他の二人にアドバイスしているのを聞いていた。 人に教えるということに全く向いてなさそうだった南条君だったけれど、何気に上手でびっくりしてしまった。 レッスンの後は、皆で順番にシャワーを浴び、身支度を整える。 何せスゴイ人数だ。私と杏奈は最後の方だったので、私達が身支度を終えて外に出た頃には、辺りはすっかり薄暗くなっていた。 「お疲れ様」 声に目を遣ると、そこにはテニス部の皆がいた。 もちろん、盛りだくさんのギャラリーを引き連れて、だけど。 「そっちもお疲れ様です」 そう言って笑うと、彼らも屈託のない笑顔を見せてくれる。 「すごく楽しかったです!ありがとうございました!」 「いえいえ、間宮さんスジがいいから、舞さんとテニスやってみてもいいんじゃないかな」 「ホントですか!?」 藤代君って、おだて上手。杏奈はすっかり乗せられてしまっている。 「ホントびっくりしたもんなー!南条と普通に打ち合って、おまけにポイント取っちゃうとか」 「いえいえ、南条君が手加減してくれてたからですよ。っても、最初のサーブは容赦なかったですけど!」 私は、褒めてくれた菊池君の言葉に謙遜しつつ、南条君への文句も織り込ませる。 本当にあのサーブは情け容赦がなかった。下手するとケガするレベルだ。
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