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「帰るぞ」
「え?…後片付けは大丈夫なの?」
「明日の朝からになっている」
「そうなんだ」
そう言えば、杏奈はどうしているだろう?
連絡しようと思ってスマートフォンを取り出すと、杏奈から連絡が入っていた。
『帰りは藤代君達が送ってくれることになったから、別々でね!』
なんとまぁ…ちゃっかりしてることで。
私がクスクス笑っていると、斎がどうした、といった顔を寄越す。
私はスマートフォンの画面を見せて、事情を説明すると、斎は納得したように頷いた。
斎が帰り支度を済ませ、教室の明かりを消そうとする。
「あ、ちょっとだけ待って」
「…」
私はもう一度窓際へ行き、空を見上げた。
「どうした?」
傍に来ていた斎に、少し困ったように笑う。
「なんだか名残惜しくなっちゃって」
「…」
そして、私達は生徒会室を出て、斎が鍵をかける。
薄暗い廊下や階段は、一人なら歩けないほどに不気味だけれど、今は斎が傍にいるから怖くもなんともない。
それに、校舎内にはまだまだ生徒がたくさんいるはずだった。屋上で花火を見ていた人達だ。
彼らと遭遇するのではないかと思っていたけれど、不思議と誰とも会わなかった。
後で聞いてみると、屋上から外へ向かうルートで開放されていたのは一つだけで、私達が歩いている場所はそこから外れていたからだったらしい。
なんとなく計画めいたものを感じるのは、気のせいだろうか?
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