通りの記憶

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六本木通り 六本木通りにあるコンビニの前で待ち合わせしたのは、彼女と一緒に行きたい店がわかりずらい場所にあったからだ。社交辞令なしと言った彼女は、言葉通りに僕と会う約束をした。言葉通りじゃなかったのは僕が店の場所を変えたこと。別に、雰囲気のある店の方が何かが始まるかもしれないなんて期待してたわけじゃない。いや、どこかで期待していたのかもしれない。期待してなかった僕と、何かを期待していた僕はきっと普通に共存していた。 コンビニの中で立ち読み(するふりを)しながら、僕は通りを歩く人を気にしていた。細くて小さいくせに、歩くのが速い彼女を見逃さないように。なかなかやって来ないのは当たり前だった。僕が待ち合わせの時間より、十五分も早くここに着ていたのだから。 待ち合わせ時間ちょうどになって、待ちきれなくなって外に出た。と、ちょうど彼女は現れた。 「会社から歩いて来ちゃった。」 えっ、嘘でしょ。 「結構、遠かったんじゃない。」 「うん。遠かった。」 僕の大好きだった彼女は、何故かいつも歩いていたような気がする。  
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