通りの記憶

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表参道   表参道沿いにあるカフェで君は僕の前に座っていた。二階のテラス席を選んだ僕達は、見つめあったり、通りを見下ろしてみたり、そして、たまにいちゃついてみたり、寒がったりしてた。 「最近、目尻のしわが気になるんだよなぁ。おじさんとしては。」 「なんで、全然気になんないよ。長瀬さんのは笑いじわだから、いいじゃん。」 両手で顔を平目みたいに横に伸ばす彼女。僕も真似して顔を突っ張ってみせた。 何を大事にして生きてるかって話をした。彼女のキーワードは「人」。僕のキーワードは「自己満足」。それって、彼女が良い人で、僕が悪い人ってことなんだろうか。 そういえば、彼女は滅多にわがままを言わなかった。その日も、そろそろ帰ろうかって言っても、素直にうんって言うだけだった。 「そろそろ帰ろっか。」 「うん。」 「その前にトイレ行って来ていい?」 「うん。」 もっと長い時間、一緒にいたかった。一瞬では終わらない時間。彼女のキスで目が覚めることが出来たなら、まだ一緒にいれたねって、思えるのに。 「悪い。待たせた。」 席に戻ると彼女はうつむいていた。いつも忙しそうにしてたから、寝ちゃってたんだ。そういえば、その日も遅れたとか言って、小走りで来たっけ。 「風邪ひくよ。」 僕はそう言って、彼女をキスで目覚めさせた。彼女が、まだ一緒にいれたねって思ったかどうかはわからないけど。
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