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もしも、俺と犬彦さんがあの屋敷に行くことがなければ、きっと全員の今が大きく変わっているはずだ。
俺と犬彦さんは静岡旅行を満喫し、茜さんのみが屋敷を訪れる。
俺たちは他人のまま。
有理さんは、俺たちの面倒を見る手間がなくなり、俺は茜さんの講義を聴くこともなく、三条さんの華やかな笑顔も知らず、そして六花の指輪は、きっと書庫で永遠に眠ることになる。
…それは良いこと? それとも悪いこと?
いや、そもそも後になってから、こうやってIFについて考えること自体ナンセンスなのか。
運命という考えは、やはり傲慢かもしれない。
だって俺と犬彦さんはこうして、三日前と同じ日常に戻っていくことができるけれど、三条さんは雪泰さんのいない世界に生きていくことになる。
決して三日前に戻ることはできないんだ。
それが運命に決められたことなのだと言われたら、俺だったら納得なんて絶対できない。
運命というものがあるのだとしたら、きっといいことだけではなく、悪いことに対してもその力を発揮するはずだ。
それは磁石のように引き寄せたり、あるいは同時に引き裂く力なのかもしれない。
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