狐の嫁入り

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終業式の帰り道。こんな真夏の真昼間は暑すぎて、近くの神社で涼みながらアイスでも食べることになった。昨夜の祭りの名残で落ちていた狐のお面を、西條は嬉しそうに被る。 「あっ、猫」 猫好きな西條は猫が近寄るたびにがしがしと撫で回す。猫も猫とて、どんな猫も必ず西條に寄り付く。 「ねぇ本郷。昔から、猫と狐は仲良しなんだって。私、本当は人間に化けた狐なのって言ったら、どうする?」 「そうだな。このベトベトのアイスキャンディーを食わせて、『歯にくっついた供物を手で取ろうとしているうちに正体がバレる』っていう迷信を、今ここで証明してやる」 俺が西條の目の前にアイスの棒を突き出すと、西條は大袈裟にのけぞった。「わ。やめてー。ばれちゃう、お嫁に行けなくなるー」 突然、木漏れ日がさす中にいる俺たちに、キラキラと雨のシャワーが降りかかり始めた。 「あ」と同時に声をあげた。西條が照れながら言う。「狐の嫁入り、だね」
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