第1章

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暑い、暑い、扇風機から送られてくる風は、濁って生ぬるい。 暑くて眠る事ができない、暑さに耐えきれず窓を開ける。 心地よい夜風と共に、クラクションとマフラーを改造した車やバイクの轟音が響き渡る。 両親が寝ている1階の部屋から、父の怒声が響く。 「もう我慢ならん!」 「あなた! 何処に行くの!?あなた!」 母の声と共に、玄関のドアが荒々しく開けられる音が聞こえた。 私はそれらの声と音を聞き、1階に駆け下り玄関から外を見る。 父が両手に鉄パイプとガソリン缶を持ち、国道の方へ駆け出して行くのが見えた。 父の後を追う私の耳に、父の絶叫が響く。 「人の迷惑も考えず、夜な夜な騒音を撒き散らしやがって! これでも食らえ!!」 父の絶叫の後、ボンと言う音と共に真っ赤な火柱が上がった。 国道に走り出た私の目に、火達磨になって転げ回っている人達や、燃え上がる車の中から助けを求める人、それに、難を逃れた人達に笑いながら、鉄パイプで殴りかかる父の姿が映る。 父は逮捕されたが、心を病んでいて病院に収容された。 それが去年の夏。 暑い夏の夜が訪れると共に、去年と変わらず国道を我が物顔で走り回るあいつらが、騒音を撒き散らす。 父は入院したままだが、弟が昼間、鉄パイプとガソリン缶を用意していた。 あいつらと共に、夏なんてなくなればいいのに。
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