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暑い、暑い、扇風機から送られてくる風は、濁って生ぬるい。
暑くて眠る事ができない、暑さに耐えきれず窓を開ける。
心地よい夜風と共に、クラクションとマフラーを改造した車やバイクの轟音が響き渡る。
両親が寝ている1階の部屋から、父の怒声が響く。
「もう我慢ならん!」
「あなた! 何処に行くの!?あなた!」
母の声と共に、玄関のドアが荒々しく開けられる音が聞こえた。
私はそれらの声と音を聞き、1階に駆け下り玄関から外を見る。
父が両手に鉄パイプとガソリン缶を持ち、国道の方へ駆け出して行くのが見えた。
父の後を追う私の耳に、父の絶叫が響く。
「人の迷惑も考えず、夜な夜な騒音を撒き散らしやがって! これでも食らえ!!」
父の絶叫の後、ボンと言う音と共に真っ赤な火柱が上がった。
国道に走り出た私の目に、火達磨になって転げ回っている人達や、燃え上がる車の中から助けを求める人、それに、難を逃れた人達に笑いながら、鉄パイプで殴りかかる父の姿が映る。
父は逮捕されたが、心を病んでいて病院に収容された。
それが去年の夏。
暑い夏の夜が訪れると共に、去年と変わらず国道を我が物顔で走り回るあいつらが、騒音を撒き散らす。
父は入院したままだが、弟が昼間、鉄パイプとガソリン缶を用意していた。
あいつらと共に、夏なんてなくなればいいのに。
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