故意

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「コレ、食うと頭が良くなるクスリ」  と、ケンちゃんが言う。 「えっ、うそ、すごい!」  あたしはもちろん、それを信じる。 「貰っていいの?」 「ああ。一本で知能が10上がるぞ」 「10!?」  その度合はよくわからないが、無邪気に驚いてみせる。 「じゃあさ、十本食べたら今よりも100、頭が良くなる?」 「ああ」 「百本なら1000?」  ケンちゃんが少し顔をしかめたのであたしは緊張する。 「腹壊すぞ」 「……えへへ、そうだね」  ゲームが大好きで学校が大嫌いなケンちゃんは、毎日制服を着て家を出ては、神社の境内で暇を潰す。猫だけが友達。孤独なアナタ。あたしは非力な幼馴染。  ケンちゃんを笑わせたくて、毎日工夫する。今日はお稲荷様の真似をして近づいた。 「お前って馬鹿だよな」 「うん。だから……アイス食べなきゃ。うんとたくさん」  ソーダ味のアイスはなぜか、甘じょっぱくて、ほろ苦い。
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