卒業

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まだ咲く気配のない桜を見上げながら櫂の事を考えていると、またメッセージが届いた。 美夏かな……と思ったら、中司(なかつかさ)先輩だった。先輩は僕より1つ上で、僕の前のキャプテンだった人だ。 背が高く、面倒見もよく、テニスも上手くて、みんなに慕われていた。 メッセージには、 『テニスコートにいる』 とあった。 僕は再び校門をくぐってテニスコートに急いだ。 「夏樹、久しぶり」 相変わらず眩しい笑顔の中司先輩が、コートに立っている。 「先輩、お久しぶりです。今日はわざわざありがとうございました」 「卒業おめでとう。 どうだ、感想は?」 「寂しいです。本当にあっという間でした」 僕の答えに、先輩は「そうだな」って相づちをうつと、ラケットを渡してきた。 「ちょっとやらないか?」 「いいですね」 僕は上着を脱ぐと、卒業証書や花束と一緒にベンチに置いた。
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