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その時初めて自分が泣いていることに気がついた。
「ご、ごめ……なさい」
泣きたいのは、先輩なのに。
僕が泣いたらまた気を使わせちゃうのに。
高校時代、櫂が女の子と仲良く喋ってるのを見るたびに、美夏と喧嘩してるのを見るたびに辛かった。
告白されたって聞くと、今度こそ付き合っちゃうかも…って泣きそうになった。
そんな時、黙って側にいてくれたのが先輩だ。
ただの優しい先輩。そんな風にしか考えてなかった。
櫂の事を相談したりはしなかったけど、好きな人が別の人を思って落ち込んでるのを慰めるなんて、そんな辛いことを僕はずっと先輩にさせてきたんだ。
「ごめ………な……さい」
今更謝っても、どうにもならない。
分かってるけど、他にどうしたらいいのかもわからない。
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