卒業

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久しぶりな感覚にワクワクする。 そう言えば、テニスをするのは引退して以来だ。 「先輩、お手柔らかに頼みます」 僕は、シャツの袖を巻くって、ラケットを構えた。 「革靴だし、無理しないようにね」 上手な人とする打ち合いは楽しい。 先輩は僕の服装とブランクを考慮して、あまり動かなくても取れるところにきちんと返してくれる。 ポールを打つ音が響き渡り、ラリーが続く。 自然と笑顔が溢れる。 あ……… 少し手元が狂い、ボールがネットに引っ掛かってしまった。 転がったボールを拾い、ハンカチで汗を拭う。 「もう一回お願いします」 「いいよ」 僕と先輩は小一時間ほど、ラリーを楽しんだ。
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