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チャイムを鳴らすとおばさんが出て来て、僕の顔を見てホッとしたように笑った。
「なっちゃん、櫂を心配して来てくれたの?」
なっちゃん呼びは今でも変わってない。ちなみに美夏はみーちゃんって呼ばれている。
「はい。殴り合いの喧嘩をしたって聞いたので。
怪我してるんですか?」
「顔を殴られたみたいで腫れてるんだけど、後は大丈夫よ」
「良かった。あ、相手の人は?」
「櫂が胸ぐらを掴んだから服が伸びたくらいかな。怪我はさせてないから。
とにかく上がって。部屋にこもって出てこないのよ」
僕は2階の櫂の部屋の前まで行った。
『トントン』とノックして、「櫂、僕だよ。開けて」って声をかけると、鍵をあける音がした。
そっとドアを開くと、櫂が入り口に背を向けてベッドに寝転んでいた。
それは、昔園庭の隅で背中を丸めて座っていた姿と同じだった。
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